人工生命
【英】AL, Artificial Life
人工生命とは、生物の特徴や進化の仕組み、遺伝のメカニズムなどをあらかじめソフトウェアに組み込むことによって、コンピュータ内で生命の動きをシミュレーションすることである。米サンタフェ研究所のChristopher Langton(クリストファー・ラングトン)が1987年に提唱した「人工生命宣言」に端を発する。
人工生命は、生物学、化学、コンピュータやシミュレーション、電子工学や遺伝子工学、純粋に理論的な実験などの様々な手段を用いることによって研究されており、複雑系の科学の一分野に位置づけられる。
また、生命体の持つ自己保持や成長、複製や増殖、進化(変異と適応)など、生命体の本質を「もの」として、素材そのもの、個体や集団そのものに問うのではなく、振る舞いの過程や機能から定義づけることまで、見かけ上、同様の機能や振る舞いを見せるプログラムや電子的な機械などを「生命」と同義に捉えることで、生命系の理解に寄与しようという概念でもある。
具体的には、生命系の機能や動作を人工的に持たせたマイクロマシンなどの、機械製作コンピュータによるシミュレーション実験や、CG技術を用いた動植物の成長表現、原始地球の模擬環境下での炭素系生物の創造など、多岐に渡る分野において応用されており、人工生命という概念は、従来単に生物学において「生命」と呼ばれていた概念に変革をもたらしつつあるということができる。
さらに、振る舞いや過程といった意味から、経済現象や社会現象までをも生命現象と捉えることで、広く研究成果を得ようといった手法までを含んだ、研究の方法も目的も多岐にわたる学際的な色彩の強い分野でもある。
なお、現在では、遺伝子の構造を模して、擬似的にそのアルゴリズムを実現するジェネリックアルゴリズムや、脳の構造を模したニューラルネットなど、様々な方法や概念が考案され、例えば、組み合わせ最適化問題の一つである「巡回セールスマン問題」などへと応用されている。
また人工生命と同様に、知的な振る舞いをコンピュータ上でシミュレートするものが「人工知能」であると言うことができる。
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